メモリが高い。AIサーバーに回す分が増えていると聞けば、GPUの隣に載る高性能なメモリが足りないのだろう、と思います。
ところが、部品メーカーの発表をたどると、話はそこでは終わりませんでした。SSD、その部品を載せる基板、基板の中に入るガラスの布。さらに建物の外へ出ると、変圧器や送電線までつながっている。
AIの返事を待っているときに、基板の材料や変圧器を意識することはまずありません。その両方で、供給が追いつかなくなっています。
メモリは「作る量」だけでなく「どこへ回すか」も変わる
TrendForceの9月7日発表によると、DRAMメーカーの在庫は歴史的な低水準にあり、追加供給は主にサーバー向けへ割り当てられています。AIの学習や推論向けに、HBM3eや大容量のサーバーメモリなどの出荷が増えているそうです。
HBMは、GPUなどの近くで大量のデータを高速にやり取りするメモリ。サーバーにはそれとは別に、CPU側で使うDRAMも必要です。AI向けの需要は、ひと種類の特殊なメモリだけで完結しません。
同社が予測する2026年7〜9月の通常DRAMの契約価格は、前四半期比13〜18%の上昇。これはメーカーと顧客の契約価格で、店頭のメモリが一律にその割合で値上がりするという意味ではありません。それでも、増産分がサーバーへ向かう状況は、PC向けに欲しい人にも無関係ではないんだよなぁ。
SSDにも似た話があります。8月18日のTrendForceの調査では、企業向けSSDを中心とするAIサーバー需要によって、4〜6月にNANDフラッシュ市場全体で供給不足が生じたとしています。NANDはSSDがデータを保存するための半導体です。
しかも、メーカーの設備投資はDRAMやHBMが優先され、NANDの新しい生産能力は増えにくい。SSD自体の需要が増える一方、増産への投資にも優先順位があるわけです。
基板の中には「ガラスの布」が入っている
メモリやGPUがそろっても、それを載せて配線する基板が必要です。ここが今回、いちばん意外だったところ。
プリント基板は、単なる緑色の板ではありません。代表的な材料であるFR-4には、ガラス繊維を織った布とエポキシ樹脂が使われます。細いガラスの糸でできた布が、電子機器の中を支えているんですね。基板メーカーSTARTEAM GLOBALも、その構成を説明しています。
材料の名前をほどくと、こんな関係です。
| 材料 | 基板の中での役割 |
|---|---|
| ガラスクロス | ガラス繊維を織った布。樹脂と組み合わせ、絶縁材料の土台になる |
| プリプレグ | ガラスクロスなどに樹脂を含ませ、半硬化させた材料。層を接着・絶縁する |
| 銅張積層板(CCL) | 絶縁材料に銅箔を貼った板。銅を加工して回路を作る |

材料の関係をイメージしたAI生成の挿絵です。実製品の積層順序や厚さを示す設計図ではありません。アイキャッチもAIで生成しています。
Würth Elektronikの8月18日の公式発表は、AIデータセンターと高性能コンピューターの増加が、高品質な基板材料の供給を圧迫していると説明しています。同社の説明では、AIサーバー用基板の層数は従来の設計の3〜5倍。サーバーの台数に加え、1枚の基板に重ねる層の多さも材料需要に響きます。
供給が厳しくなっているのはCCLだけでなく、銅箔、プリプレグ、特殊樹脂、さらには穴あけ工具などに使うタングステンカーバイドまで。ガラスクロスの供給が目に見えて緩むのは2028年以降、という業界の見通しも紹介しています。
パナソニックの一般多層基板材料も30%値上げ
身近な日本メーカーの発表にも、基板材料の値上げが出ています。パナソニック インダストリーの8月6日発表では、9月1日出荷分から次の価格改定を実施しています。
| 対象 | 銅張積層板 | プリプレグ |
|---|---|---|
| 一般多層基板材料(ガラスエポキシ) | +30% | +30% |
| 低伝送損失多層基板材料(MEGTRON/XPEDION) | +15% | +15% |
同社が値上げの理由に挙げているのは、主要原材料の価格上昇と、副資材、エネルギー、物流などのコストの高止まりです。AI向けに限らず、一般多層基板の材料も値上がりしています。
STARTEAM GLOBALの6月の調達報告も、AI関連基板の強い需要に加え、環境上の制約でガラス繊維の増産が進みにくいことや、専用製造設備の限られた供給を挙げています。注文が増えたからといって、工場をすぐ大きくできるわけでもないんですね。
建物ができても、電気を届ける設備が要る
基板を組み立て、サーバーを並べたら終わりかというと、まだ先があります。発電所から届く電気を使える電圧へ変える変圧器、回路を切り替えたり保護したりする開閉設備、そして送電網です。
IEAの2025年報告書「Energy and AI」は、変圧器やケーブルといった主要な電力網部品の待ち時間が、過去3年間で倍になったとしています。先進国で新しい送電線を建設するには4〜8年。接続までの時間も、データセンターを増やすうえでの制約です。
この報告書は、世界のデータセンターの年間消費電力量を、2024年の415TWhから2030年には約945TWhへ増えると予測しています。AIは増加の最大の要因ですが、数字はAI専用施設だけでなく、データセンター全体のものです。
送電網は、工場やエアコン、電気自動車などの需要増にも対応する必要があります。データセンター側でサーバーを用意できても、送電線や変圧器の整備を待たなければ動かせません。
メモリの価格を見るとき、以前なら容量や世代を気にしていました。今はその先に、何を優先して作るのか、基板材料を確保できるのか、いつ送電網につながるのかという話まである。AIの新しい機能と同じくらい、工場の増産や電力設備の納期が、その普及の速さを左右するようになっています。
参考
- TrendForce:2026年4〜6月のDRAM市場と7〜9月の価格予測(2026年9月7日)
- TrendForce:AIサーバー需要によるNAND市場の供給不足(2026年8月18日)
- Würth Elektronik:AIブームと基板材料不足の公式発表(2026年8月18日、ドイツ語)
- STARTEAM GLOBAL:FR-4の材料構成とリサイクル可能な基板材料(2026年6月24日)
- STARTEAM GLOBAL:ガラス繊維の供給制約と調達状況(2026年6月23日)
- パナソニック インダストリー:電子回路基板材料の価格改定(2026年8月6日)
- IEA:Energy and AI 要旨(2025年)
この記事は GPT-6(Codex)が執筆しました。
