1968年、アポロ8号の宇宙飛行士ビル・アンダースが月の軌道から撮った「Earthrise」は環境運動の象徴となった一枚だ。それから58年後の2026年4月6日午後6時41分(米東部時間)、アルテミスIIのオリオン宇宙船の窓から今度は地球が月の地平線に「沈んでいく」瞬間が撮影された。

「Earthset」と呼ばれるこの写真で、地球はわずかな三日月型の光しか見えない。直射日光が当たっているのはオーストラリアとオセアニア上空の雲だけで、地球の大部分は夜側だ。前景の月面クレーター(オーム・クレーター)には衝突時に液化した地殻が飛び散って固まったセントラルピークが鮮明に映っている。この写真の直後、オリオンは月の裏側へと消え、地球との通信が40分間途絶えた。

7時間のフライバイ、40分の孤立
アルテミスIIは4月1日にケネディ宇宙センターから打ち上げられた。クルーはリード・ワイズマン船長、ビクター・グローバー(黒人宇宙飛行士として初の月近傍飛行)、クリスティナ・コーク(女性として初の月近傍飛行)、カナダ宇宙庁のジェレミー・ハンセン(カナダ人として初)の4人だ。

4月6日、宇宙船は約7時間かけて月をフライバイした。そのうち月の裏側に隠れた40分間は地球とも管制とも通信できない完全な孤立状態に入り、クルーはその間に1万枚超の写真を撮影した。地球からの最大距離は約40万6,700km——アポロ13号が1970年に記録した人類の最遠到達距離を更新した。
日食54分:地球上では不可能な観測
月が太陽を遮る日食をオリオンは約54分にわたって観測した。地球上の皆既日食は最長でも7分半ほどだ。それに比べ54分という長さは、コロナの構造や明るさの時間変化を追うのに十分な観測窓だった。

コロナとは太陽の外層大気で、普段は太陽が明るすぎて観測が難しい。この写真では左端に金星が確認でき、月面の夜側は地球照(地球に反射した太陽光)で薄く照らされている。NASAによれば、このコロナの光が黄道光(惑星間塵の散乱光)との組み合わせかどうかをサイエンスチームが現在解析中だ。

月面地形:探査機の写真では届かなかった場所
クルーは飛行中、月面の色・明度・テクスチャの違いを口頭で記録しながら撮影した。色や明度の違いは地表の組成や地質史を読み解く手がかりになる。

今回記録されたのはヴァヴィロフ・クレーター、サウスポール=エイトケン盆地、オーム・クレーターなど月の裏側の地形だ。サウスポール=エイトケン盆地は太陽系最大級の衝突盆地で、アルテミスIIIの着陸候補地に隣接している。また、月の夜側で隕石衝突の閃光を6回観測した。閃光の頻度は月表面の変化速度の推定に直接使えるデータで、長期的な着陸拠点設計の安全評価に関わる。
地球なき空に、月と土星と火星

フレームの左端にオリオンのパネルが銀色に光り、中央には太陽を背にした月が大きく広がる。月の右下のエッジのすぐ外に土星、さらに右端に火星が小さな輝点として並ぶ。地球はこの画面のどこにもない——クルーが月の裏側にいた40分間の眺めだ。
1万枚のデータが向かう先
オリオンは4月10日午後8時07分(米東部時間)、サンディエゴ沖に帰還する予定だ。持ち帰る1万枚超の画像と観測記録は月面地形の三次元モデル化、日食コロナデータの解析に使われる。中でも南極域の地形データは、アルテミスIIIで実際に人間が降り立つ場所を決める根拠になる。1万枚は記念写真ではなく、次のミッションの地図だ。
参考
- NASA’s Artemis II Crew Beams Official Moon Flyby Photos to Earth - NASA
- Artemis II Lunar Flyby Gallery - NASA
- Earthset - NASA Image Article
- Artemis 2 captures historic ‘Earthset’ photo - Space.com
- NASA releases stunning new ‘Earthset’ image taken during historic lunar flyby - CNN
- PHOTOS: Boundary-breaking Artemis II captures view of Earthset from moon’s far side - PBS News
この記事は Claude Sonnet 4.6 が執筆しました。
