犬・猫のiPS細胞を使った再生医療の進み具合を伝える共同通信配信記事「iPS医療をペットにも 犬で申請計画、猫も前進 市場拡大が追い風に」が2026年7月1日、中経新聞や山陰中央新報など各地の地方紙に掲載された。
老猫を飼っていると、慢性腎臓病は他人事ではない。
現状を整理しておく。
猫のiPS細胞、遺伝子を挿入せずに樹立
猫側の研究の起点は2024年9月4日、大阪公立大学大学院獣医学研究科の鳩谷晋吾教授・木村和人客員研究員らと、アニコム先進医療研究所、ときわバイオの共同研究グループが発表した成果だ。猫由来の6つの初期化因子をベクターに導入し、外来遺伝子がゲノムに挿入されない高品質なネコiPS細胞の安定作製に世界で初めて成功したと発表した。三胚葉すべてへの分化能力を確認しており、避妊手術で廃棄される子宮由来の細胞からもiPS細胞を作れることを示している。
廃棄されるはずだった細胞が治療の種になる。地味だが、筋の良い話だと思う。
このiPS細胞を使った研究が進めば、猫の代表的な持病である慢性腎臓病をはじめとする病態解明や、新しい細胞治療法の開発につながるだろう。ただし現段階はまだ細胞株の樹立段階で、猫向けの再生医療製品として承認されたものはまだない。
犬は先行製品があり、iPS細胞由来製品も準備中
犬側はすでに市場に出ている製品がある。DSファーマアニマルヘルスの「ステムキュア」は、イヌ(同種)の脂肪組織由来間葉系幹細胞を主成分とし、2021年3月に世界初の動物用再生医療等製品として条件・期限付き承認を取得、同年11月に発売された。犬の椎間板ヘルニアに伴う臨床徴候の改善が効能で、体重1kgあたり0.5〜1×10⁶個の細胞を週1回、3週間投与する。ただしステムキュアが使っているのは体性幹細胞(脂肪由来間葉系幹細胞)で、iPS細胞由来ではない。
iPS細胞由来の犬向け製品を手がけているのがVetanicだ。日本大学・慶應義塾大学発の技術をもとに2021年1月に設立されたスタートアップで、世界で唯一、臨床応用に適したイヌiPS細胞の作製に成功しているという。2026年4月にはシスメックス、コージンバイオと資本業務提携を結び、量産・品質管理体制の強化を進めている。
冒頭の共同通信記事が指す「犬で申請計画」は、おそらくこのVetanicのイヌiPS細胞由来製品のことだろう。
市場は拡大予測
Fortune Business Insightsの推計では、犬の幹細胞治療の世界市場は2026年時点で6,700万ドル規模、2034年には2億2,000万ドルまで拡大するとされる(年平均成長率16.02%)。猫向けの市場規模はまだ算出段階に至っていない。
ただ、犬側の製品化・資本提携が先行することで、研究資金や規制のノウハウが猫にも波及する可能性はある。
慢性腎臓病は猫の死因の上位に入る持病で、根治的な治療法は今のところない。
iPS細胞由来の治療がすぐに実用化するわけではない。それでも、病態解明が一歩でも進むなら、うちの猫たちにとっても無関係な話ではなくなる。
参考
- iPS医療をペットにも 犬で申請計画、猫も前進 市場拡大が追い風に | 中経新聞
- 【科学スコープ】iPS医療、ペットでも実用化近い? | 山陰中央新報デジタル
- 世界初! 遺伝子挿入がなく高品質なネコiPS細胞の安定作製に成功 | 大阪公立大学
- Vetanic - iPS細胞を動物再生医療の真ん中に。まずは犬から。
- iPS細胞で動物再生医療を推進するVetanic、シスメックス株式会社およびコージンバイオ株式会社と資本業務提携を締結 | PR TIMES
- DSファーマアニマルヘルス、世界初の犬(同種)脂肪組織由来間葉系幹細胞製品「ステムキュア」の製造販売承認取得のお知らせ
- Canine Stem Cell Therapy Market Size, Share | Forecast [2034] | Fortune Business Insights
この記事は Claude Sonnet 5 が執筆しました。
