Anthropicが9月23日、興味深い開発記録を公開した。 8月のわずか2週間で、claude.aiとデスクトップアプリの主要な操作が約3倍速くなったという。
「Claudeが自身を速くした」と聞くと、モデルの回答速度が上がった場面を思い浮かべるかもしれない。 だが、今回速くなったのはWebやデスクトップアプリの操作感だ。 画面を開く。 会話を切り替える。 メッセージを送信する。 日常的なアプリ操作の待ち時間を削った話であり、モデルの文章生成が一律で3倍速くなったわけではない。
実際にどれだけ待ち時間が縮んだのか
Anthropicが公開した75パーセンタイルの測定結果は次の通りだ。 75パーセンタイルとは、計測値を短い順に並べたときに75%の操作が収まる数値を指す。
| 操作 | 改善前 | 改善後 |
|---|---|---|
| claude.aiを新しく開き、入力できるまで | 3.1秒 | 0.55秒 |
| Claude Codeの新規セッションを開始するまで | 0.8秒 | 0.3秒 |
| Claude Coworkのクラウドセッションを読み込むまで | 2.6秒 | 0.73秒 |
3つの操作で改善の幅は異なる。 Anthropicは、主要な操作体験全体の成果を「約3倍」と表現している。
同社のチームは利用データをもとに、利用全体の95%を占める4つの操作を選び出した。 「アプリを開く」 「会話を始める」 「既存の会話を開く」 「メッセージを送る」 これらをWebとデスクトップ、製品ごとの違いで切り分け、計13の測定項目を設定したという。
Reactを待たずに入力させる工夫
具体的にどんな変更を加えたのか。 分かりやすいのが、claude.aiを開いた直後の入力欄だ。
従来はReactの初期化が終わるまで、文字の入力すら待たされていた。 改善後はHTMLにあらかじめ入力欄を配置している。 Reactが裏で立ち上がっている最中でも、利用者はすぐに文字を打ち始められる。 本来の入力コンポーネントへ切り替わる際も、入力内容はそのまま引き継がれる仕組みだ。
見かけの工夫だけにとどまらない。 会話を切り替えるときは入力欄を作り直さずに維持する。 サイドバーの会話一覧にカーソルが重なった段階で、データを先読みする。 サイドバー自体の再描画も90%減らしたという。 デスクトップアプリではV8のコードキャッシュを事前に作り、起動時の再コンパイルを減らしている。
人間のエンジニアが選んだ約20件の改善候補に対し、Claudeは効果をミリ秒単位で見積もって作業を進めた。 プロジェクト開始から3日目には、13項目のうち12項目で目標を達成していたという。 相当なペースだ。
処理時間ではなく「体感の遅さ」を測る
この取り組みで目を引くのは、修正の数そのものよりも測定への姿勢だ。
チームはSlackチャンネル上でClaude Tagのベータ版を活用した。 Claudeに遅い箇所の調査、ベンチマークの作成、コードの修正案、公開後の監視までを委ねたという。
進め方は明快だ。 問題を見つける。 再現して測る。 コードを直す。 本番の利用データを確認する。 成果をCIの基準に残す。 このサイクルを愚直に繰り返した。
実行時間はマシンの状態や通信環境によって揺れやすい。 そのため処理によっては、命令数やReactの描画回数といった指標も併用して測ったという。 一方で、数字が改善しても実際の待ち時間の短縮に結びつかないベンチマークは採用されなかった。
測定の難しさを物語るのがサイドバーの事例だ。 読み込みが終わった後に項目がカクついて動く現象があったが、従来の指標では問題として拾えていなかった。 そこで、画面のどの領域がいつ動いたかを記録する仕組みを新たに設けた。 公開後のデータを調べたところ、操作可能になった後になんらかの要素が動いてしまう読み込みが31%もあったという。 原因を特定し、順次手を打っていった。
目に見える画面の揺らぎまで測り直す。 単に処理速度の数字を眺めるだけでは、使い心地の改善には届かないのだろう。
3,000件超の変更を事故なく通した仕組み
この2週間で取り込んだ変更は3,000件を超える。 これだけの変更を短期間で投入しながら、利用者に影響する障害やロールバックは一度も起きなかったと報告されている。
とはいえ、公開の判断までClaude任せにしたわけではない。 Slackの作業スレッドごとに人間のエンジニアが担当として付き、コード変更には必ず人間の承認を求めた。 画面の見た目や操作感に影響する変更は、画面や録画を目視で確認している。
安全対策も段階を踏んでいる。 利用者に影響が出そうな変更には機能フラグを付けた。 社内テストから始め、一般利用者の1%、そして全体へと段階的に公開範囲を広げている。 最初に入力欄を表示する修正でも、Reactの画面との位置ずれや入力漏れが起きないよう、あらかじめテストを組んで臨んだという。
改善の余地と、計測への問い
華々しい数字が並ぶ一方で、Anthropic自身も課題を認めている。 待ち時間が長引く側の95パーセンタイルの数値や、膨大な履歴を持つ会話には、まだ改善の余地があるとしている。
速くする作業に終わりはない。 「何をもって遅いとするのか」 「どの数字を追えば、利用者が感じるストレスを捉えられるのか」 ツールの性能以上に、何を測るべきかの設計が問われる。 今回の事例から読み取れるのは、そうした測定に対する地道な工夫かもしれない。
参考
この記事は GPT-6 が執筆しました。
