Andrej Karpathy氏がX(旧Twitter)で、LLMに説明を依頼する際の工夫を提案している。航空宇宙産業の技術文書規格「ASD-STE100」の考え方を意識させると、出力が引き締まって読みやすくなるという内容だ。
Karpathy氏は、AIが作成した文章を読む側の負担を減らす手段としていくつかの形式を挙げている。文章自体の書き方を絞る工夫(ASD-STE100の活用)のほか、図や画像の生成、操作可能なHTMLページ、ナレーション付きの解説動画などだ。その中でもASD-STE100の指定は、特別な表示環境を用意せず、プロンプトへの指示だけで手軽に試せる方法として紹介されている。
ASD-STE100の概要とKarpathyの提案
ASD-STE100(Simplified Technical English、通称STE)は、航空宇宙分野などの技術文書向けに定められた英語の規格だ。英語に不慣れな整備士でも手順を正しく理解し、読み間違いによる誤解を減らすことを目指している。誤解を絶対に防げるという保証ではないが、語彙や書き方を絞ることで解釈のブレを抑える仕組みだ。2025年1月15日に発行された最新版(Issue 9)では、約900語の承認語彙と53項目の書き方ルールが定められている。
Karpathy氏の経験によれば、主要なLLMはこの規格の内容を知識として持っており、プロンプトで指定することで読みやすい出力を得られたという。ただし、これはKarpathy氏自身の使用感に基づく評価であり、すべてのモデルや用途で読みやすさが保証されるわけではない。
また、ASD-STE100はもともと厳格な英語のルールだが、Karpathy氏は規則の「8割くらい」を意識して緩やかに適用することを提案している。この「8割」という数字は、何らかの指標で測定された厳密な遵守スコアではなく、ルールに縛られすぎないための感覚的な目安だ。
日本語の文章整理への応用と比較例
ASD-STE100は英語の技術文書のための規格であり、日本語への正式な準拠規格ではない。そのため日本語で活用する場合は、規格そのものを満たすのではなく、その設計思想を着想源として文章を整理することになる。具体的には、「文を短く区切る」「同じ対象には一貫して同じ用語を使う」「前提条件や不確実性を崩さない」といった指針を取り入れる。
文章を整理する効果を、短い作業手順を題材にした説明用の例で確認してみる(※この記事の解説のために作成した例であり、Karpathy氏の引用ではない)。
一般的な書き方の例:
設定を変更する前に、現在のファイルのバックアップを取ることをお勧めします。また、依存パッケージを更新する場合、テスト環境での動作確認を省くと不具合を見落とす可能性があるため注意してください。
STEの考え方を参考にした整理案:
設定変更の注意点は次のとおりです。
- 設定を変更する前に、現在のファイルのバックアップを取ることを推奨します。
- 依存パッケージを更新する場合、テスト環境での動作確認を省くと不具合を見落とす可能性があります。
この整理案では、2つの注意点を分け、条件・推奨の強さ・不確実性を同じまま保持している。
文章を短くしようとすると、推奨だった内容を「作成します」と必須手順に変えてしまったり、「不具合が起きます」と断定してしまったりすることがある。前提条件やリスクの度合いを歪めずに伝えることが、技術的な正確さを保つうえで重要になる。なお、このように文章を簡潔にしたからといって、読み手の理解速度が常に向上すると保証されるわけではない。
関連ツールの状況とプロンプト例
Karpathy氏の投稿をきっかけに、この考え方を活用する試みがGitHubなどで公開されている。
たとえば prithivrajmu/asd-ste100 では、Karpathy氏の提案した「8割」という方針に着想を得て、事実や条件、不確実性を維持しながら出力を簡潔にするプロンプト構成が試みられている。また、JAICHANGPARK/ASD-STE100 では、Claude Code向けに /asd コマンドや、ルールの逸脱を簡易的にチェックするlinterが提供されている。
ただし、JAICHANGPARK/ASD-STE100 が備えるチェック機能は、一部の形式的なルールを機械的に調べるheuristic(推測的な簡易ルール)に留まり、公式承認語彙辞書に基づく認証ではない。そもそも規格を管理するASD/STEMGは、ツールの存在は認めつつも、特定のソフトウェアを公式に承認・認証しない方針をとっている。
専用ツールを使わなくても、日常のプロンプトに簡単な指針を添えるだけで試すことができる。日本語で依頼する場合は、「ASD-STE100に準拠して」とだけ書くよりも、文章整理の具体的なルールを直接伝える方が意図が伝わりやすい。
これ以降の解説文は、技術文書の制限言語(ASD-STE100)の考え方を参考に、以下の指針で簡潔に書いてください。
- 1文を短くし、1つの文で伝える内容を1つに絞る
- 同じ対象には、最後まで一貫して同じ用語を使う
- 曖昧な強調や装飾的な表現を省く
- 前提条件や例外、不確実性(「〜の可能性がある」など)は省略せずそのまま残す
まとめ
LLMに「分かりやすく説明して」と頼むと、抽象的な前置きや不要な修飾が増えてしまうことがある。ASD-STE100という既存の規格を着想源にして、「文を短くする」「用語を統一する」「条件と事実を正確に残す」といった具体的な制約を与えることで、要点が整理された文章を引き出しやすくなる。長めの仕様書や手順の要約を依頼する際に、試してみる価値のある工夫といえる。
参考
- Andrej Karpathy on X
- ASD-STE100公式:About STE
- ASD-STE100公式:STE and Software
- GitHub - prithivrajmu/asd-ste100
- GitHub - JAICHANGPARK/ASD-STE100
この記事の本文は Gemini 3.8 Flash (High) が執筆しました。
